不妊治療のことを調べていると、「不妊治療から離婚に繋がった」というケースを想像以上に目にします。
内容を見ると、夫婦での「思いの差」が影響していることが見えてきます。
不妊治療が離婚に繋がらないためにはどうしたらよいのでしょうか?
知りたいところからどうぞ
お互いの結婚観を確認しておくこと
「夫が大事」「妻が大事」か「子どもが一番大事」か
「やっぱり子どもが一番大事」
「夫のことは後回しが当然」
「結婚したらそう思うようになるのが普通でしょ?」
こんな会話をよく耳にしますが、あなたはどうですか?
もしかしたら、結婚する前は「夫が一番」と思っていても今はそうじゃないかもしれません。
でも、それが悪いということではありません。
心は変わっていくものですから、結婚して時間が経てばお互いを思う気持ちに変化があっても当然かもしれません。
ただ、不妊治療をするなら、少し立ち止まって考えてみませんか?
離婚したくないなら「夫(妻)が一番大事」と決めておくこと
もし不妊治療をするなら、最初に「夫(妻)が一番大事」と決めておくとよいかもしれません。
不妊治療は体力的、精神的、経済的にダメージを与えることが少なくありません。
そんなとき、パートナーに心無い言葉をかけてしまったら、お互いに「自分は頑張ってるのに」「あなたはわかってくれない」「私だけが頑張ってる」と相手を責めて自己嫌悪に陥ってしまいます。
「夫(妻)が一番大事」と決めておくと、その心は相手にしっかりと伝わりますので、あなたが困ったときにはしっかりとサポートしてくれるはずです。
どちらかが頑張るのではなく2人で一緒に頑張る意識を持つこと
不妊の原因が夫側にもないか早めに確認することが大切
「赤ちゃんがほしい」と夫婦で思っていたとしても、なぜか男性のほうが気持ちが入っていないことがよくあります。
「そのうちできるよー」
なんて他人事のようにいわれたことある女性も多いのではないでしょうか?
頑張っているのは自分だけと気持ちが落ちたことはありませんか?
しかし、WHO(世界保健機関)の調べによると、不妊の要因の約50%は男性にあるといわれています。
もしかしたら、他人事のように取り組んでいた男性のほうに不妊の原因があるかもしれません。
男性不妊は今では珍しいものではありませんが、それでも「自分には関係ない」と思っている男性が多いのも事実です。
不妊治療の成功確率を上げるためにも、夫婦の認識を共有するためにも、男性側の精子の状態を早めに確認しておくことは大切なポイントです。
不妊治療専門のクリニックで精子検査(精液検査)をするのが一番ですが、もし男性が恥ずかしいなどの理由でクリニックに行きたがらない場合などは、郵送で検査できる精子検査キットなどもありますので利用してみましょう。
夫が協力的でない場合には「なぜ協力的じゃないのか」気持ちを確認することも大切
男性が不妊治療に協力的じゃない場合、そこには必ず何らかの理由があります。
「まさか不妊の理由が自分だとは思っていない」
「お金がかかるからプレッシャーに感じる」
など、男性もいろいろと葛藤している場合が少なくありません。
パートナーの気持ちに寄り添うことができれば、「じゃあどうしたら一緒に不妊に向き合ってくれるか」意識を共有することもできます。
不妊治療の「やめどき」を決めてからはじめること
「やめどき」を夫婦で話し合って決めておく
不妊治療をこれからはじめる方にとっては、あまり考えたくないことかもしれません。
ただ、「もしも授からなかったら」というときのことを考えて、必ず「不妊治療のやめどき」夫婦で話し合っておきましょう。
経済的な問題(不妊治療にかけられる予算)、体力的な問題(治療がつらいなど)、精神的な問題(なかなか授からない)など、どういう状態になったら不妊治療をやめるのか、より具体的に話し合っておくことで、もし授からなかったとしても納得して不妊治療を卒業して、その後の夫婦生活を前向きに送ることができるようになります。
不妊治療をやめることで自分を必要以上に責めない
不妊治療に限らず、妊娠する確率は年齢を重ねるごとに低くなってきます。
各ステージごとの妊娠率
- 自然妊娠の確率
25歳未満・・・43%
25~29歳・・・25.5%
30~34歳・・・20%
35~39歳・・・14.5% - 人工授精で妊娠する確率
30歳以下・・・12.4%
31~36歳・・・6.2%
36~41歳・・・3.3% - 体外受精で妊娠する確率
30歳以下・・・38.5%
31~36歳・・・31.2%
37~41歳・・・24.6%
ですから、一定の割合で「授かることができない」夫婦が存在することになります。
「妊娠できないのは自分のせい」などと自分を責めすぎたりしないようにしましょう。
そのために、先ほどお伝えしたように、不妊治療をはじめる前に「やめどき」を話し合っておくことが大切になります。
【補足】それでも離婚したい場合に知っておきたい裁判やお金のこと
「離婚は結婚よりも大変」とはよく聞きますが、不妊が原因で離婚になる場合も大変なのでしょうか?
一般的な離婚の流れ
離婚は、一般的には協議→調停→裁判というプロセスを経て進行していきます。
協議・調停・裁判の違い
- 協議離婚とは?
夫婦間での話し合いによって成立する離婚、お互いの両親を交えて話し合う場合もあり。
お互いがサインと印鑑を押した離婚届けを地方自治体の窓口に提出するだけで完了。 - 調停離婚とは?
協議ではまとまらず、調停(裁判所)での話し合いによって成立する離婚。
夫婦別々に裁判所に行き、調停委員という人に双方の言い分を伝え、間に入ってもらいながら話し合いを進め、合意がされれば離婚となります。 - 裁判離婚とは?
調停ではまとまらず、裁判にまで至って成立する離婚、裁判所に訴状を提出して開始。
法廷離婚事由※があれば離婚となります。
※法廷離婚事由とは・・・民法770条1項に挙げられている5つの事例に当てはまるものをいいます。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年間の生死不明
- 強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと
- その他婚姻を継続しがたい事由があるとき
不妊が原因でも離婚はできる?
不妊が離婚原因となる場合には、法廷離婚事由の5番目「その他婚姻を継続しがたい事由があるとき」に当てはまることが必要です。
その中で、離婚が認められたケースにはこのようなものがあります。
不妊治療がうまくいかずに疲れたケース
不妊治療を巡ってケンカが絶えず夫婦仲が悪くなったケース
不妊に悩みうつになったケース
セックスレスが原因のケース
二人目が不妊のケース
不妊が原因で慰謝料は取れるの?
結論からいうと、不妊が原因で離婚した場合、慰謝料を取ることは困難です。
これは、慰謝料は通常、夫婦の一方に落ち度があることが基本的に必要ですが、不妊という身体症状に落ち度があるとはいえないからです。
そのほかのお金の問題
離婚をする場合、慰謝料だけでなくそのほかにも考えなければいけないお金の問題があります。
子どもの養育費
養育費は、子どもが両親に対して生活に必要な金銭を請求するものです。
親権を取らなかった方の親は、一般的には、家庭裁判所の算定表といわれる基準に基づいた金額を親権のある方の親に支払うこととなります。
婚姻費用(離婚後の生活費)
夫婦は、生活費をお互いに分担する民法上の義務があります。
ですから、別居している場合であっても、夫婦の一方が他方に対し、生活費の分担を請求できます。
これを婚姻費用の分担請求といいます。
金額は、お互いの月々の生活費によって決まり、婚姻費用についても養育費同様家庭裁判所が定めた算定表という一定の基準があります。
財産分与
夫婦が婚姻中に気付いた財産は夫婦共有の財産です。
その割合は半分半分となり、離婚する場合は、この共有関係がなくなるので、財産を二人で分けなければなりません。
原則は半分半分ですが、夫婦の離婚後の生活見込み等により若干調整がされることがあります。
年金分割
年金分割は、夫婦の婚姻期間における厚生年金納付実績を分割するという手続きです。
年金は納付実績に応じて支払われるので、分割すると将来もらえる年金額に影響します。
分割の比率は、基本的に1対1ですが、請求は離婚から2年以内にしなければいけないので注意が必要です。
公的扶助
公的扶助とは、児童手当、児童扶養手当、母子手当、生活保護等を指します。
離婚後に片親となり、経済的に苦しい場合などは公的扶助を受けることができ、医療費等様々な面で優遇されるので、受け取った金銭以上の効果があります。
受けられるかどうかの基準は、住んでいる地方自治体によって違うので、地方自治体に問い合わせてみてください。
参照:ベリーベスト法律事務所より
まとめ:不妊治療で夫婦仲を悪くしないために二人の意識を共有しておくことが大切
不妊治療は夫婦どちらかが頑張れば成功するというものではありません。
二人の共通認識がなければ、その負担(体・心・金銭)に押しつぶされてしまい、最悪の場合には離婚に繋がってしまうことも少なくありません。
そうならないためにも、
お互いの結婚観を確認しておくこと
どちらかが頑張るのではなく2人で一緒に頑張る意識を持つこと
不妊治療の「やめどき」を決めてからはじめること
は、しっかりと話し合っておきましょう。